脱・頭打ち。2,000万件の顧客データでEC売上を伸ばすデータ戦略

「製品を通じて世界中の人々に喜びと感動を広げる」をミッションに、セキュリティソフト「ZERO」をはじめ、「筆まめ」「いきなり PDF」などのパソコンソフトやスマートフォン向けの多彩なアプリ、「ポケトーク」「AutoMemo」などの IoT製品を提供するソースネクスト株式会社。
ECサイトの登録ユーザー数は、累計約2,000万人にものぼります。全社の収益の半分近くを占めるまでに成長したEC事業ですが、売り上げの伸び悩みという課題に直面していました。
atarayoの支援によりデータ基盤を構築したことで、データ活用による顧客軸の戦略・施策立案ができる環境が整い、さらなる成長を目指しています。
<主な施策>
・リアルタイムで複数のデータソースを分析し、可視化するダッシュボードの構築
・データに基づいた戦略・意思決定ができる環境の整備
・データ基盤を活用したマーケティング施策の配信
今回お話を伺ったのは、CPO(最高製品責任者) 兼デジタルマーケティングディビジョン長の柳沼さん、デジタルマーケティングディビジョンのECグループで販促企画を統括するリーダーの松田さん、同グループでデータ分析や営業数値管理を担当するリーダーの藤岡さんの3名です。
なぜ売り上げが伸びない?「顧客軸」のデータ分析ができないという弱点
――貴社のEC事業の概要について教えてください。
柳沼さん(以下、柳沼): IoT製品、パソコン用・スマートフォン用のソフトウェアのEC事業です。現在の累計登録ユーザー数は約2,000万人で、売り上げは会社全体の収益の半分近くを占めており、ソースネクストの主力事業です。
また、EC事業は、量販店や法人向けに新製品を本格的に販売する前のトライアル販売を通して、市場のニーズを見極める重要な役割も担っています。
── ご依頼いただく前は、どのような課題をお持ちだったのでしょうか?
柳沼: 顧客軸でのデータ分析が十分にできていなかったことです。分析の軸が「製品」や「チャネル」という単位に限られてる状態では、本当にお客様に喜んでいただけるアプローチができません。
例えば、「500万人のメール会員に同じ製品情報を一斉送信する」といった画一的な施策しか打てなかったのです。
さらに、必要なデータをすぐに取得できない点も課題でした。EC部門にはデータ分析や抽出の機能がなく、必要な場合はシステムチームに依頼するしかありません。タイミングによってはデータ取得に1週間ほどかかり、交渉して3日で対応してもらうこともありました。必要なデータをすぐに見られないため、迅速な意思決定ができず、歯がゆい思いをしていました。
──顧客軸でのデータ分析ができていないことで、事業にどのような影響がありましたか?
柳沼: 「収益が頭打ちになってしまうのではないか」と危機感を感じていました。顧客軸の分析ができていないため、全体のコンバージョン率を上げることに注力するしかありませんでした。
2,000万人超のユーザー登録者数という膨大な資産があるにもかかわらず、顧客一人ひとりに寄り添うようなアプローチができないことが、売上を伸ばすうえでの大きな課題でした。
データ可視化に留まらない。戦略まで踏み込んだ提案が決め手
── atarayoにご依頼いただいた決め手を教えてください。
柳沼: データを活用した課題解決に伴走いただける点です。もともとは、Googleアナリティクスの移行に伴い、データ取得ができなくなったため、現場でデータを見られるようダッシュボードの構築をご相談していました。
ですが実際にお話して、単にデータを可視化するだけではなく、データをどう活用し、売上につなげるかといった戦略部分にまで、踏み込んだ提案をいただけるという期待感があり、より広くサポートをご依頼しました。
松田さん(以下、松田): 何社か候補はあったのですが、知人から紹介いただいて、「とても良いな」と思い即決しました。ビジネス経験が豊富で、アナリストとしての視点をお持ちで、本質的な課題解決ができそうだと感じました。
「見たい時に、見たい形で」データを取得。意思決定の質と速さが飛躍的に向上
── 導入はどのような流れで進んだのでしょうか?
柳沼: 最初にダッシュボードを構築いただき、次に顧客セグメントの分析と可視化に取り組みました。売り上げが伸び悩んでいる顧客層を明確化したいと考えたんです。仮説はあるものの、分析する方法が社内になく、atarayoさんのおかげでようやく着手できました。
松田: ECサイトをリニューアルしたばかりで、顧客分析の必要性を強く感じていたタイミングだったので、ありがたかったです。
藤岡さん(以下、藤岡): その後、メール配信のセグメント分析に取り組み、顧客ごとの反応を可視化することで、よりきめ細かな施策が打てる環境を整えました。
── 導入後、どのような点で成果を感じましたか?
柳沼: 質の高い意思決定を、以前よりずっと早くできるようになっています。これまではデータ集計だけで1週間かかる場合もあり、スピード感が課題でした。
今では自分たちでダッシュボードで最新のデータを確認しながら、どの顧客層にアプローチすべきかという課題感を即座に洗い出し、顧客一人ひとりにパーソナライズされた情報を配信できるようになりました。
松田: 現場レベルでも、手作業でしか出せなかったデータが山ほどありました。毎日何時間もかけていましたが、atarayoさんのツールのおかげで負担がかなり減りました。
藤岡: リアルタイムでデータを確認できるようになったのは、とても大きいですね。感覚的な話ではなく、客観的な数字をもとに話ができるようになりました。
メンバー間で現状を正しく理解し、誤解なくコミュニケーションを取れる状態が作れたのは、大きな成果です。チームのレベルが、一段ずつ上がっているような感覚があります。
メンバーの目線が「顧客軸」にシフト。データに基づいた新たな戦略が誕生
──EC事業全体の成果として、最も大きな変化は何でしょうか?
柳沼: EC部門のメンバーの視点が、「製品をどう売るか」ではなく、「どの顧客にどうアプローチするか」という「顧客軸」に変わってきました。この変化は、当社のバリューである「お客様の声を聞く」をより具体的に実現する大きな一歩だと感じています。atarayoさんが整備してくださったデータ環境があったからこそ、実現できたものです。
私たちが立てた仮説の通り、長年ご利用いただいているロイヤル層の売上が伸び悩んでいることをデータで可視化でき、社内で「ロイヤル層にアプローチするプロジェクト」が発足し、経営陣を交えた議論のきっかけとなりました。
── 当社のサポートについて率直な感想をお聞かせください。
柳沼: レスポンスが早く、安心してプロジェクトを進行できています。また、データ基盤に関すること以外でも疑問があれば、「一度、atarayoさんに聞いてみよう」という話が出るくらい、社内で頼りにしています。
EC事業の成長に向け、社内のあらゆるデータを活用していく
── 今後、データをどのように活用していこうと考えていますか?
柳沼: より具体的な施策の立案と弊社全体のデジタルマーケティングの最適化です。
今は、EC運営メンバーの視点が上がり、顧客理解を進めている途中です。今後は、「どういう顧客がいて、何をするべきなのか」という理解をさらに深めた上で、それを具体的な施策に落とし込み、実践していく予定です。
全社的なデジタルマーケティングについては、現在はAmazonや楽天といった販売チャネル別のチームごとに、最適化に取り組んでいる状況です。今後は、実店舗を含めた全てのデータをクロスさせ、広告の貢献度を分析するなど、新しい取り組みにも挑戦したいと考えています。
藤岡: よりお客様に喜んでもらえる施策を打ちたいです。導入前は、メールなどデータがそれぞれ単体で存在しているだけでしたが、今ではそれらがすべてつながっていき、全体像が見えるようになりました。顧客満足度の向上を目指し、これまでにない戦略・施策が生まれる面白いフェーズに入りました。
── 今後データ活用をさらに加速させるうえで、atarayoに期待する点は何でしょうか?
柳沼: これからも、ソースネクストにはない専門的な知見や技術を提供していただきたいです。例えば、ゆくゆくはデータ分析だけではなく、AIを活用したマーケティング施策などさらに広くご相談できたらと考えています。
受発注の関係を超えて、「ECを伸ばす」という最終的なゴールを共に目指すパートナーとして、一丸となって取り組んでいただけると嬉しいです。
松田: 全社的なデータ活用支援です。実は社内には、まだまだ活用しきれていないデータがたくさんあります。最終的には、社内のあらゆるデータをリアルタイムで確認できるような環境づくりをしていただけたらと思います。
── 最後に、データの活用に課題を持つ他の企業へのメッセージをお願いします。
柳沼: 身近で興味のある領域から、少しずつデータ活用を始めてみることをおすすめします。いきなり大きなプロジェクトを始めるのはハードルが高いかもしれませんが、まずは小さな一歩からでも、日々の業務の質とスピード向上につながるはずです。