AIネイティブ実現へ|AIを前提とした広告業務フローへと改善

AIネイティブ実現へ|AIを前提とした広告業務フローへと改善

近年、多くの企業がChatGPTやその他の生成AIツールを導入し、単発的なタスクや特定の業務においてAIの力を体験し始めています。しかし、その多くは「点」としての活用に留まっています。

「点」としての活用とは、複数の工程からなる業務プロセス全体の中でAIを断片的に、あるいは特定の課題解決のためだけに導入している状態を指します。 例えば、営業プロセスの中で、営業メールの作成、商談後の議事録作成といった個別の業務だけをAIに任せるケースです。

AIを活用し、企業が持続的な成長をするためには、AIツールの導入だけでなく、組織文化や業務プロセスを含めた「AIネイティブ」な企業への変革が必要です。

AIネイティブな企業とは、AIを企業の中核に据えて、全ての業務プロセス、製品、サービス、意思決定にAIを組み込んでいる企業を指します。 つまり、AIが単なる「一部の作業を代わりに行う道具」ではなく、組織の活動全体に深く組み込まれ、能力を最大限に発揮できるように業務が設計されている状態です。 これにより、AIが業務の効率化、データに基づいた高精度な意思決定、新たな価値創出の源泉となります。

atarayoでは、以下の要素を兼ね備えた、AIネイティブな企業を目指しています。

  1. AIと人間の強みを最適に組み合わせた業務設計がされている
  2. 継続的な業務改善サイクルがAIを中心に回っている
  3. すべての従業員がAIリテラシーを持ち、各自の業務に最適なAI活用ができる

この記事では、atarayoがどのようにしてAIネイティブ企業へと進化しているのかを、「広告業務フローのAI転換」に焦点を当ててご紹介します。

広告業務フローのAI転換プロセス

atarayoの広告業務は大まかに、以下のステップで行われています。

1
市場調査
  • 競合調査
  • 消費者分析
  • 消費者分析を基にした商品・サービスの訴求策定
2
広告出稿条件の策定
  • 出稿媒体の選定
  • 出稿予算の決定
  • 広告媒体ターゲティングの選定
3
広告作成
  • 訴求を基に広告コピーの洗い出し
  • 他社の出稿広告調査
  • 広告文・広告見出し制作
  • 広告バナーの原案作成
  • 広告バナーの制作
4
入稿・配信
  • 設定内容に沿って入稿作業

従来のフローにおいて、特に課題が多かったのが市場調査と広告作成です。 市場調査においては、調査における情報の収集と整理に時間がかかり、考察までに時間を要する点が課題となっていました。 広告作成においては、広告バナーの要件定義に時間がかかる点が課題となっていました。特に以下2点に時間を要しており、広告業務全体の業務効率を圧迫していました。

  1. ユーザーに訴求内容が伝わるよう、バナー内で訴求の配置パターンを試行すること
  2. マーケターの制作意図をデザイナーが再現すること

また、広告を出稿してみない限り広告品質が判断できないため、品質安定や広告効果の精度向上・安定が困難でした。

これまでも分析作業やキーワードの洗い出しといった一部の作業にはAIを導入していました。しかし、これらの部分的なAI活用では、残念ながら業務全体の効率化や全体最適には至っておらず、AIネイティブな業務フローの実現には遠い状況でした。

今回、広告業務フロー全体を見直し、AIネイティブに転換することで、従来の課題の解決、そして人間が「より付加価値の高い業務」に集中できることを目指しました。

現状と理想の設定・AI活用工程の特定

業務フローの現状と理想を整理することで、課題の明確化を実施。これにより、上述の課題が特定されました。 また、人間が介在する機会の少ない工程の工数を最小化するため、各工程での人間の介在余地を評価。評価に以下のようなルールを設け、AIが活用できる箇所を特定しました。

  • 介在余地が低い工程にはAIまたは自動化ツールを活用。
  • 介在余地が高い工程には、品質水準を担保するための仕組みやマニュアルを導入。

AIに必要な役割の洗い出し

課題解決には、AIが必要とされているのはどんな役割なのかを洗い出し。業務フローに組み込むAIまたは自動化ツールの要件を確認します。

  • 市場調査
    • 情報収集・分析の効率化
    • 施策に活かせる深い消費者理解
  • 広告出稿条件の策定
    • 詳細な消費者分析に基づくターゲティング案の自動作成
  • 広告作成
    • ターゲットに響く高品質な広告原案の自動化
    • ペルソナに基づいた広告案のブラッシュアップ
    • 出稿予算の決定
  • 予算管理の効率化

必要なツールの明確化

課題と、AIに必要な役割が明確化したことにより、各工程で理想に近づくために必要なAIおよび自動化ツール、マニュアルなどを導出。 以下はAIや自動化ツールを活用することで、より効率的かつ高精度に再構築された各工程と、それぞれの役割に関する説明です。

  • 市場調査
    • 競合調査AI
      • 競合サービスの調査対象数と調査項目数を、人間の手作業から倍以上に増加。
      • AIが情報収集や整理を担うことで、人間は調査結果の考察に注力が可能。
      • 幅広い調査結果に対し充分な考察時間を確保したことで、顧客課題の解像度が高い訴求の制作が可能。
    • 消費者調査AI
      • 市場データや競合情報、サービス情報を収集し、それを基に高精度な消費者インサイトを導出。
      • より効果的な戦略立案が可能。
  • 広告出稿条件の策定
    • 上記の消費者調査AIによる消費者分析を基にAIがターゲティング案作成
    • 深い消費者理解によって的確なターゲティングが可能。
  • 広告作成
    • ペルソナ対話型AI
      • 消費者調査をもとにペルソナをAIで再現。これによりターゲットに刺さる広告文・見出しの原案作成が可能。
      • AIがペルソナに沿って、ターゲットに刺さるデザイン要件を提案。
      • 原案作成を効率化し、短時間で高品質かつ多くの案を検討。
      • AIがペルソナになりきり訴求案をブラッシュアップすることで、ターゲット顧客への訴求力が向上。
      • 担当者は最終的な調整やデザインラフの作成に注力することで、より洗練されたアウトプットを作成。
      • AIが過去のクリエイティブ成功事例をもとに提案することにより、クリエイティブ制作の効率と広告効果が向上。
  • 出稿予算の決定
    • 出稿予算の決定における日予算自動算出ツールの作成により、予算管理業務を効率化。

atarayoでのAIを活用したサービス、アプリについては、以下をご覧ください。

競合調査サービス:https://staging.atarayo.co.jp/service/ai-competitiveresearch/

ペルソナ対話型AI:https://staging.atarayo.co.jp/service/ai-persona-application/

効果

AIを組み込んだ新しい広告業務フローによって得られる効果を以下にまとめました。

  • 広告効果向上
    • AIを活用した高精度なターゲティング、よりターゲットに届くクリエイティブ生成による、広告費用対効果向上を実現できる。
  • 業務時間削減
    • 従来手作業で時間を要していた作業がAIを活用することによって業務時間の大幅な削減が可能。
  • 戦略的意思決定の高度化と迅速化
    • AIが、リアルタイムで膨大なデータを分析することで、担当者は客観的な根拠に基づいた最適な戦略立案と迅速な意思決定ができる。
  • クリエイティブの質向上と多様化
    • AIを活用することで、多様なデザインやコピーの作成を可能にし、よりターゲットに響く、質の高いクリエイティブを効率的に生み出すことができる。
  • 担当者のスキルアップとモチベーション向上
    • ルーティン化された工程をAIが補うことにより、より高度な戦略立案や顧客へのコンサルティングといった「人間にしかできない」創造的な業務に集中できる。そのため、担当者のスキルアップとモチベーション向上に繋げることができる。
  • ヒューマンエラーの削減
    • 手作業による入力ミスや設定漏れなど、広告運用におけるヒューマンエラーのリスクを自動化、詳細なマニュアルによって排除することで、運用品質の安定と信頼性の向上に貢献する。

特筆すべきは、単なる「時間削減」にとどまらず、業務の質の向上にもつながっている点です。

AIによる定型業務の自動化により、担当者はより創造的な業務や戦略的思考に時間を費やせるようになります。例えば、従来は工数的に難しかった詳細なペルソナ設定や、多角的なABテストなどが可能になり、最終的なアウトプットの品質を大きく伸ばすことができます。

また、このように業務フローを型化することにより、各工程で求められる思考や動きをチーム全体で共有することが可能になります。

今後の展望

atarayoは、広告業務フローのAI転換を足がかりに、さらに広範な領域でのAIネイティブ化を目指しています。 具体的には、広告業務以外のマーケティング領域全般、さらには営業、バックオフィス業務など、全社的なAI展開を視野に入れています。また、全従業員のAIリテラシー向上も重要な課題と捉え、継続的な教育とリスキリングに投資していきます。 今後も、AIの力を最大限に引き出し、お客様の持続的な事業成長を支援できるよう、AIネイティブ企業を目指して進化し続けます。

この記事の著者
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Tomotaka Kato
加藤丈峰
事業会社でBtoBマーケティングツールの新規事業開発から、新規事業のグロースとコンサルタント、データの活用支援を経て、
2022年に株式会社atarayoを設立。BtoBのデータ分析・マーケティング支援事業と、BtoCのEC事業を中心に展開。
この二つの事業を軸に、多様なニーズに応えるサービスを提供。