AI×データ時代を勝ち抜く経営層の役割と組織改革

AI×データ時代を勝ち抜く経営層の役割と組織改革

AI技術とデータ活用が、企業の競争力を左右し、事業成長の鍵を握る現代では、経営層の意識改革と組織全体の変革が不可欠です。

弊社代表取締役 加藤の視点から、「経営」という観点を通して、AIとデータの時代を勝ち抜くためのヒントをお聞きし、5つのテーマにわたりお届けしています。

今回はその第3弾として「AI×データ時代を勝ち抜く経営層の役割と組織改革」についての考えをお届けします。

経営層の意識改革と学びの姿勢

AI技術が目覚ましい進化を遂げる中で、経営層が最も意識すべきことは、「社会全体がどうあるべきか」という理想の状態を常に定義し、その実現に向けて「自社の事業をどのように進化させるか」を考えることです。

AIの汎用化が進むと、目的に応じて柔軟に、自律的に行動できるようになってきています。その「目的」をAIに与えるのは人間ですが、理想の未来像が見えていなければ、AIに適切な指示を出すことはできません。AIに目的を与え、羅針盤となる理想の状態を経営層が明確に示すことが必要です。

そして、こうした理想状態を定義するには、現在の仕事の範囲にとどまらず、積極的に外部に目を向け、多様な経験を積んだり、知識を吸収し、取り入れる姿勢が必要です。

しかし、広く共有されている情報だけでは、一歩先の視点は得られません。自らが積極的に新しい経験をし、その経験に基づいて多角的な解釈や視点を獲得していくことが重要なのです。

私たちは、生まれた環境やこれまでの経験によって、思考や意思決定のパターンが形作られています。だからこそ、新しい外部からの刺激や知識を取り入れることで、新たな思考が生まれ、行動へと繋がります。経営層は、自らの思考の枠を広げるために、意識的に新しい情報や環境に身を置き、「外部の力」に触れていく必要があると考えています。

データドリブン経営への転換と乗り越えるべき課題

変化の激しい市場環境、多様化する顧客ニーズに対応するためには、もはや従来の経験や勘に頼るだけでは限界があります。現代ビジネスでは、AIを最大限に活用し、データに基づいた迅速かつ精度の高い意思決定が求められています。 しかし、この転換には、乗り越えるべき課題があります。主な課題は以下の3点に集約されます。

  • データの整理と品質確保

    「ガベージイン・ガベージアウト=ゴミを入れてもゴミしか出てこない」という言葉があるように、入れるデータの質が悪ければ、出てくる結果もまた質の悪いものになります。悪いデータの質とは具体的には、不正確なデータや欠損データ、古いデータなどを指します。AIが学習し、意思決定に役立つ情報を導き出すためには、データを使える形で整理し、蓄積していくことが求められます。

  • 要件定義の不足

    何を明らかにしたいのか、どのような課題を解決したいのかという要件定義が曖昧なままデータ分析を進めると、データ分析自体が目的となりビジネス課題の解決に繋がらず、期待する結果を得ることが難しいです。そのため、データ活用をする前には、まずは目的を明確にすることが重要です。

  • データを見て終わってしまうこと

    過去のデータをどれだけ時間をかけて分析しても、過去の売上は1円も上がりません。データはあくまで未来に向けて分析し、そこから得られた示唆に基づいてアクションを起こして、意思決定に繋げていくことが重要です。データを見て「わかった」で終わらせず、常に「次の一手」を打つところまでをデータ活用のサイクルとすることが必要です。

これらの課題を乗り換え、データドリブン経営へと転換することにより、AIとデータを活用した顧客への価値提供ができ、持続的な事業の成長へとつながります。

失敗力を育む高速サイクル

失敗サイクル

AI×データ時代において、失敗を恐れずに高速で試行錯誤を繰り返すことが重要です。従来の完璧主義的なアプローチから、仮説検証型のアプローチへの転換が必要です。

AI活用には失敗がつきものです。失敗を恐れるのではなく、早い段階で小さな失敗を繰り返し、そこから迅速に改善していくサイクルを回すことが重要だと考えています。

例えば、アメリカの航空戦におけるパイロットの意思決定プロセスとして生まれた「OODAループ」というモデルがあります。これは、Observe(観察)、Orient(状況判断)、Decide(意思決定)Act(実行)の頭文字をとったものです。先の読めない状況では、現場に状況判断と実行を任せた方が、失敗のサイクルが早く、それをもとに改善していく方が効率的であるという考え方です。

これはビジネスにおいても同様で、失敗と改善のサイクルを短くすることが肝要です。

要件定義に時間をかけすぎたり、可視化に時間をかけすぎたりして、いざ実行してみたら失敗だった、となると時間だけが無駄になってしまいます。時間をかけて完璧な計画を立てるよりも、小さい規模で始めて、運用しながら改善を重ねる方が効率的なのです。

そのため、まずは小さい領域でも良いのでAIを導入し、実際に運用してみる中で失敗から学び、改善を重ねていくことが必要です。

また、マーケティング領域では、「失敗にすらできていない」ケースが多く見られます。失敗を認識するためには、目的や予測、仮説を持って施策を実行することが不可欠です。仮説を持たずに実行すると、何が成功で何が失敗だったのかすら判断できません。だからこそ、「失敗できる状態を作る」ことも、非常に重要なのです。

AIとデータ時代を勝ち抜くには、まず経営層が理想を明確にし学びを深めること、そしてAIの力を引き出すデータドリブン経営への移行をすること、さらに「失敗」を恐れずに早くループを回すことが重要な戦略となるでしょう。

この記事の著者
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Tomotaka Kato
加藤丈峰
事業会社でBtoBマーケティングツールの新規事業開発から、新規事業のグロースとコンサルタント、データの活用支援を経て、
2022年に株式会社atarayoを設立。BtoBのデータ分析・マーケティング支援事業と、BtoCのEC事業を中心に展開。
この二つの事業を軸に、多様なニーズに応えるサービスを提供。