パラリーガルの消込業務を、80%削減。東京新橋法律事務所が挑む、督促オペレーションのAI再設計
CASE SUMMARY
事例サマリー
課題
繁忙日には入金が200〜300件に集中し、消込作業だけで2〜3日を要していた。入金件数に比例して手作業が増え、パラリーガルの大きな負荷に。手入力による照合のズレも発生していた。
打ち手
- 事務所の入金データ・債権データに合わせた消込ツールを共同開発
- 同姓同名の債務者を役職・金額・住所などで一括絞り込み
- 債権番号順に自動消込し、手入力を排除
成果
- 2〜3日かかっていた消込を、半日未満で処理(約80%削減)
- 手入力による照合ミスが解消
- 空いたリソースを電話応対などの重要業務へ再配分
東京新橋法律事務所様は、多数の債権回収案件を扱う法律事務所です。取り扱う債権の件数が多く、入金管理・消込・督促といった定型業務が、パラリーガル(事務員)の業務工数を逼迫していました。繁忙日には入金が集中し、消込作業だけで2〜3日を要することもありました。
atarayoは、督促オペレーション全体をAIネイティブに設計し直すことを見据え、そのファーストステップとして、入金データと債権データを突合する消込領域を自動化しました。2〜3日かかっていた消込を半日未満に短縮し、空いた人的リソースを電話応対などの重要業務へ振り向ける体制づくりを支援しています。
<主な取り組み>
・入金データと債権データを自動で突き合わせる消込ツールの開発
・同姓同名の債務者を条件で一括絞り込み/債権番号順の自動消込
・督促業務をAI前提で再設計(今後)
今回お話を伺ったのは、代表弁護士の前田祥夢様と、債権回収を担当する山本昌輝様です。
繁忙日は消込だけで2〜3日。手作業に追われていた導入前

―― ツール導入前、消込業務はどのような状況でしたか。
山本様: 消込は、入金された金額を、どの債務者のどの債権に充当するのかを一件ずつ照合していく作業です。手作業のため入金件数に比例して工数が増え、数百件の入金が集中する日には、その業務だけで丸2、3日かかってしまうこともありました。
―― 特に入金が集中するのは、どのようなときですか。
山本様: 年金支給日にあたる15日や、五十日(ごとうび)(5・10・15・20・30日)です。特に15日は、多いときで200〜300件近くまでいきます。
―― 件数以外の負荷もありましたか。
前田様: 正規定額と入金額が一致しない債権者がいて、入金額から必ずしもどの債権への充当なのかが一義的に明確ではありません。一人の債務者の入金といっても、債権の数に比例して工数が右肩上がりになっていました。
なぜ atarayo だったのか ―― 開発で終わらせず、事業成果まで伴走する
―― 数ある選択肢のなかで、atarayoに依頼した決め手を教えてください。
前田様: HPの事例に、法律事務所業界ではまだ取り組めていないような、最新のAI・データを活用した取り組みが載っていました。これができれば、業界で競争優位に立てると確信し、問い合わせました。単なる開発やダッシュボードの構築ではなく、事業をデータ・AIで伸ばすところまで伴走してくれる点も、大きな決め手でした。
atarayoの強みは、AIのPoC(実証実験)をして終わり、ダッシュボードを納品して終わり、ではないことにあります。クライアントの事業のなかでデータ・AIを実際に使い、事業の成果につながるところまで責任を持って伴走します。
汎用のAIは、いまや他社も使います。汎用AIを導入するだけでは、競争優位にはつながりません。事務所固有のデータ基盤を整え、その事務所の業務フローに特化したAIを構築してはじめて、差別化になります。
実際、事務所の入金データと債権データを固有のルールで突き合わせる照合は、汎用ソフトの標準機能では埋めきれません。atarayoは現場の消込業務を一つひとつ確認したうえで、データ構造から設計しました。守秘義務に配慮したデータの扱いも、設計段階から組み込んでいます。
最終的な判断は人が担いつつ、定型処理にとどまらず、データにもとづく分析や意思決定の支援までAIが引き受ける ―― この役割分担を前提に、事務所専用の仕組みを構築しています。
依頼して実感した atarayo ―― 品質とスピード、そして事業への視点
―― 実際に依頼してみて、いかがでしたか。
前田様: 期待していた「事業を伸ばす視点での伴走」が、想像以上でした。要望を伝えると、こちらの業務を踏まえたうえで、すぐに形にして返してくれます。レスポンスが速く、安心して任せられました。
最近は、AIやデータにそれほど詳しくない企業が、AIを使って営業をかけて案件を取る、という動きも増えてきています。そのなかで、本当の技術力があり、データ・AIを事業の成果につなげるところまで責任を持って動いてくれる会社は、そう多くありません。
atarayoさんはまさにそこまでやってくれる会社で、出会えてよかったと思っています。これは実際に依頼して支援が始まってみないとわからない部分でもあるので、お願いして本当によかったです。
山本様: 現場の細かい事情まで、丁寧に聞き取ってくれたのが印象的でした。消込の例外的なケースも一つずつ確認しながら仕組みに落とし込んでくれたので、実務にそのまま乗る形になりました。
正直に言うと、最初は外部の支援会社に入ってもらうことには消極的でした。ですが実際に現場に入っていただき、アウトプットの品質の高さとスピード感を目の当たりにして、考えが変わりました。
もっと早くお願いしておけばよかった、というのが今の実感です。本当にありがとうございます。
前田様: 消込のツールにとどまらず、「次はここをデータ・AIで解決できないか」といった相談ができる関係になっています。回収という事業そのものを一緒に考えられるのは、大きいと感じています。
2〜3日の消込が、半日未満に

―― 導入後、どのように変わりましたか。
山本様: 繁忙日に300件以上入ってくる消込を、半日未満で処理できるようになりました。消込にかかりきりにならず、他の業務と並行して進められます。
―― 具体的に、どんな作業が楽になりましたか。
山本様: 同姓同名の債務者も、役職・金額・住所などの条件でツール上から一気に絞り込めるようになり、1件ずつファイルを開いて確認する作業がほぼ不要になりました。手入力による金額のズレ ―― 毎月の回収額を1円単位で調べ直す作業もなくなりました。債権番号の若い順に、自動で消し込まれるためです。
―― 消込の精度はいかがですか。
山本様: 同姓同名で約束金額まで同じ場合は振込銀行の住所で絞り込み、それでも判別できないときだけ電話で確認します。例外的な対応だけが、人の手に残りました。
―― 現場の実感としては、いかがですか。
山本様: 当日のうちに終わるので、消込に追われている感覚がなくなりました。空いた時間を、電話応対などの重要業務に充てられています。
空いたリソースを、回収そのものへ ―― 売上・回収率の向上に向けて
―― 工数が減ったことの意味を、どう捉えていますか。
前田様: 消込や照合といった定型作業からパラリーガルが解放されたことで、電話応対などの重要業務に、より多くの時間を充てられるようになりました。当所の債権回収は成果報酬型なので、事務作業に費やしていた工数が浮けば、そのぶんをより付加価値の高い業務に再配分でき、成果の向上にもつながります。
―― 今後の展望を教えてください。
前田様: 督促フロー全体をAIを前提に再構築し、SMS・オートコール・メールの発信を自動化したいと考えています。オペレーターが電話応対などの重要業務に集中できる環境を整え、オペレーターごとの入金率・回収額も可視化して、効果を測定していきます。
―― 最後に、同じ課題を持つ法律事務所へメッセージをお願いします。
前田様: 件数の多い定型業務ほど、仕組みで解決できる余地があります。まずは身近な業務から、小さく始めてみるとよいと思います。
入金消込のような定型業務の自動化は、atarayoにとってゴールではなく出発点です。業務をAIを前提に構築し直し、定型処理はもちろん、データにもとづく分析や意思決定の支援までAIと自動化が担い、人はより付加価値の高い判断や重要な業務に集中する ―― この設計思想は、債権回収にとどまらず、法律事務所の経営全体に応用できます。
atarayoは、事務所固有のデータ基盤づくりから、その業務に特化したAIの設計・実装、そして成果の測定までを一貫して支援しています。汎用的なAIをそのまま導入するのではなく、事務所ごとのデータと業務フローに合わせて設計することが、競争優位につながると考えているためです。
本事例で取り組んだAIによる督促オペレーションの再設計について、その背景にある設計思想は「法律業務特化AI×独自データで事務所経営を再設計する3つの原則」で解説しています。

